未来の解像度を上げて、理想を設定することは、自ら課題設定ができる一部の経営者にしか必要ないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
私たちは少なくとも自分自身についての理想を定めることはできます。
私たちは私たち自身の経営者であり、オーナーでもあるからです。
事業ではなく、個人の人生というレベルでも、未来の視座にたつことはできます。
自分の人生を振り返ったとき、正しいことをしていたのか、面白いと思えるような選択肢を取ってたのか、思いやりを持って生きてこられたと言えるのかを考えることは、未来を起点に考える一つの方法です。
今の自分の視座から未来にどうなっていたいのかを考えるのではなく、未来を起点にして今を振り返ってみたり、「未来にどうなっていたいのか」ではなく、未来に自分がどうありたいのか、言い換えれば、未来の自分はどういう感情を持って日々を生きていたいのかを考えて、そのために今何をすれば良いのかを考えてみるのです。
もちろん、私たちは将来のためだけに生きているわけではありません。
ずっと将来のために貯金をし続けて、一切の楽しみを得ないまま終わったのでは、何のための人生なのかわかりません。
「今を生きる」ことも大切です。
でも少しだけ、未来に目を向けてみることは、今をより良く生きるためのヒントも提供してくれるはずです。
たとえば「もしお金の心配をしなくなったら何をするか」を考えて、そのときにやりたいことを今はじめてみることも一案でしょう。
未来の自分が後悔しないようにするには、ジェフ・ベゾスの「後悔最小化フレームワーク」が使えるかもしれません。
彼は自分自身が80歳になったときを想像して、そこから振り返ったときに後悔するかどうかという観点で考え、起業という選択肢を取ったそうです。
自分の理想のキャリアを考えてみて、もし現在との間にがギャップがあるのであれば、それが課題です。
その課題の解像度を上げてみましょう。
その課題を解決するにはどうすれば良いかを考え、解決策の解像度を上げてみてください。
20年後の未来の自分の視座に立ってみると、現在の自分に何を感謝し、何に苦言を呈するでしょうか。
スキルアップをしたり、誰かとの友情を育んでくれて良かったと言うでしょうか、それとも何もしなかった今の自分を責めるでしょうか。
キャリアの理想を定めるのは難しいかもしれません。
「どのような職業か」「どのような会社か」を定めるよりも、その先の「どのように生きたいか」という理想像を設定した方が良い場合もあります。
方向性だけでも決めることで、ストーリーは描きやすくなります。
単にどうありたいのかを具体的に決めるだけでなく、その未来へと至る道筋をきちんと考えることも大切です。
行動計画
を立てて、特定の状況に陥ったらこうする、といったことを事前に考えておくことも行動を円滑にしてくれます。意思決定をするときは10−10−10の考え方を用いて、10分後、10ヶ月後、10年後を想像してみることも一つの方法です。
そして行動計画も、書くことでより解像度が上がります。
本書を手に取っていただけたということは、自分や周囲の解像度にきっと何らかの課題を感じていたはずです。
しかし課題を考える前に、理想的な状態を考えているでしょうか。
もし未来の理想像を定めていないのであれば、実はまだ課題の解像度を上げる前の段階かもしれません。
そこで自分や自分の周囲の理想的な状態を、10秒位でいいので思い浮かべてみてください。
そして今の自分やチームの状態と比べてみましょう。
そこにギャップがあればそれが課題です。
そのギャップである課題の解像度を上げてみましょう。
課題の深さや広さ、構造、そして時間に分けて考えてみてください。
解決策も同様に、深さや、広さ、構造、時間という視点で考えてみましょう。
本書で解説した解像度を上げる方法は、自分や周りのチームといった身近なところでも用いることができるはずです。
そしてこうした思考の「型」は、意識的に使えば使うほど上手くなるものなので、練習がてら色々な状況で試してみることをおすすめします。